【能登ふぐー国民宿舎能登小牧台】2019年4月
 場所・電話番号 インターネット情報  時間 ・休み 料金 (2人分)

国民宿舎
 能登小牧台内レストラン


石川県七尾市
中島町小牧井部 55


金沢から能登里山海道で
約1~1時間半


のと里山海道(無料)
  横田ICから
  車で10分

  徳田大津ICから
  車で17分


電話  0767-66-1121


駐車場 55台無料


●公式HP

  https://www.qkamura
  -s.com/omakidai/

営業時間

  11:00~13:00

  個人・団体ともに
  予約のみ


定休日  なし



2人分を3人でシェアー

7020円×2人分

=14040円

 
日本には昔から「フグは食いたし、命は惜しし」 

という言葉があります。

今月は「死を覚悟して」も一生に1回は

食べてみたいフグ料理です。


命を賭けてまで美味しいのかを試したいのか……。

はたまた毒魚を食べてきたと自慢したいのか……。




私達、いわゆる食通ではないので、

”好奇心”だけで行ってきました~。


●フグの別名

   その1  
てっぽう(大阪)

         「たまに(まれに の意味)当たる」を「弾に当たると死ぬ」に掛けて「鉄砲」と呼びます。

         「てっさ」はてっぽうのさしみ、「てっちり」はてっぽうのちり鍋 という意味です。

         江戸時代には長州藩などで武士のフグ食が禁じられていたので、

         元々は隠語として使われていました。

   その2 
 ガンバ(長崎県島原地方)

         ガンバとは島原の方言で、「棺桶」の意味です!(怖い)

         美味しいフグを食べる時は、そばに棺桶を用意しなさいと言われていたからです。

   その3  
測候所(明治時代)

         その当時は現在と違って、天気予報はあまり当たりませんでした。

         つまり「ほとんど当たらないけど、たまに当たる」という意味です(笑)。

   その4  
フク(下関)

         フグは「不遇」「不具」に通じて、縁起が悪い。

         フクは「福」につながって縁起がいいからだそうです。

  
 

●フグの毒について

   1 毒量の単位   マウスユニット(MU)

        体重20gのネズミが30分で死亡する量のことです。

        人間の場合、体重によって5000~10000マウスユニットで死亡します。


   2 テトロドトキシン(フグの毒)は青酸カリの1000倍の毒性を持ちます。



   3 中毒症状

        食後30分~6時間くらいで症状が現れます。

        口や唇がしびれ、頭痛、嘔吐、呼吸困難、目の焦点が合わなくなり

        全身が麻痺してしゃべれなくなり、最悪の場合、窒息死します。

        この症状はお酒に酔っ払った症状と似ているため、間違われて放置されてしまうことがあります。

        吸収が速いため、症状が出た時には、すでに胃洗浄をしても効果がないので、

        人工呼吸器で呼吸を助けるしか方法がないとのことです。

        また解毒剤はありません。


   4 有毒部位(特に肝臓と卵巣)の管理

        フグ1尾で30人を殺せるほどの毒性があり、盗難による悪用防止のため、

        施錠できる容器に保管して適切に廃棄しなければなりません。

        東京都の条例では、フグの内臓をまず、ステンレス製のカギつき容器に保管して、

        それを築地の徐毒場で焼却し、地下に埋めることが義務づけられています。


   5 日本のフグ中毒者の数

        毎年、50人ほどがフグ中毒で発症し、そのうち数人が死亡しています。

        そのほとんどは、ふぐ調理師免許を持たず、釣ってきたフグを自分で調理して

        食べた人です。

        でもいくら免許を持っている人が調理しても、絶対に大丈夫という保証はないですよね。

        例えば免許を取るためにまだ経験の乏しい修行中の人が調理したフグだったとか…あり得ます。

        ちなみにフグの調理師免許を取るには、まず普通の調理師免許を取り、

        フグを取り扱う店で2年以上働いた後、試験を受けなければならないので最低3年かかります。


   6 フグの毒についての海外の反応

        タダでも食べたくない。

        スカイダイビングをするようなものだ。

        バカとしかいいようがない。

        恐怖を体験することで、スリルを得ているのか……全く理解できない。

        

●フグでお亡くなりになった有名人の方々

   1 福柳伊三郎   大相撲力士

               巡業地の福岡で、ふぐ中毒を起こして死亡(享年33歳)

               名前に福がついていますが、効果がありませんでした。

   2 沖ツ海福男   大相撲力士。

               婚約の祝杯の場で自分でふぐを調理して、死亡(享年23歳)

               こちらも福つきの名前です。

   3 佐渡ヶ嶽部屋  有名なふぐ死亡事件

   4 坂東三津五郎(8代目) 歌舞伎役者(人間国宝)

                 トラフグの肝臓を4人前食べて死亡(享年68歳)しました。

                 食通として知られ、渋る板前に「もう一皿、もう一皿」とねだりました。

                 危険を承知の上で危険な肝を食べた三津五郎が悪かったのか、

                 それを調理した板前が悪かったのか大論争を起こしました。

                 調理人が業務上過失致死罪の有罪判決を受けた大事件でした。

    
 
 
 

8代目 坂東三津五郎 

フグ中毒で68歳で死去



10代目 坂東三津五郎

8代目のお孫さんですね。

膵臓ガンで59歳で死去

 
●ふぐの産地・集積地・消費地

    下関ー集積地

        日本ではフグと言えば、山口県の下関が有名ですね。

        でも実際には、下関はフグの産地というよりは、集積地です。

        日本全国、中国、韓国など海外からも、フグが下関に集められます。

        それではなぜ下関が本場と言われるのでしょうか?

        明治時代に全国で最初にフグ食が解禁になった土地だからです。

        それ以降、下関には多くのフグ料理店ができ、現在のフグ料理の多くが下関で

        考え出されました。

        また、フグには猛毒があるため、毒除去の加工業者が下関に集中しているからです。

        山口県では、フグ免許を取るのが日本一難しく、3年以上(他の県は2年以上)、

        有資格者の下で従事したものでなければならないという決まりがあります。


    大阪ー消費地

        全国のフグ水揚げ量の6割が大阪で消費されています。


    石川県ー産地No1(その年によって変わりますが)

        フグがたくさん獲れても、これまではフグを食べる文化がありませんでした。

        あまり知られていませんが、フグは日本全国を回っています。

        そして産卵時期にあたる春先から初夏にかけて能登半島にやってきます。

        最近では、能登でもフグ食のPRに力を入れるようになってきました。

    


●フグのこわ~い歯

    漁師が使う直径2ミリくらいの細い針金なら簡単に噛み切ってしまうほど、

    強い歯を持っているので、注意が必要です。

    釣れてもうれしくない嫌いな魚のワースト1はフグだそうです。

    糸や仕掛けを切られる上に、自分で調理することもできないからです。

    嫌いな魚なのでそこらへんに放置され、それを犬が食べてしまう事故も起きています。

    でも港そばの猫はフグに毒があることをちゃんと知っていて食べないそうです。

    切れ味もかなり良く、アサリや蟹、ヒトデ、サンゴなど、簡単にかみ砕きます。

    アルミ缶を簡単に切り抜くフグの映像をユーチューブで見つけました。

       https://www.fugu-sakai.com/magazine/learn/2502/

    タイでは、川を泳いでいた少年が、耳の一部を2㎝ほど噛み切られました。
    
 
  

最初、フグと言えば冬のものだと思っていたので、2月頃に予約の電話をしたところ、

能登のフグは4月からですよと言われました。知りませんでした。

美しい八重桜の向こうに国民宿舎 能登小牧台が見えてきました。

 
   

能登小牧台のHP写真です。

ドローンで撮った写真でしょうか。

ちょっとした丘の上に建っていました。

 
   
 
 

ちょっとわかりにくいのですが、

木の生えている山の向こうにはお隣の

富山県にある立山連峰が見えています。

まだ雪がありました。

金沢からは見えないのですが、能登半島は

突き出ているので見えるんです。

 

七尾湾は波穏やかで、とても静かな海です。

 
 

穏やかな海に牡蠣の養殖場が見えました。

冬には能登牡蠣を食べに来たいです。

 

ヨットです。

こんなに穏やかなら、転覆する心配がありません。


   

 能登フグ満福会席ー能登フグのフルコースを予約してありました。

フグ会席の期間は4月~6月です。


食事だけなら、1人前 7020円です。

高価です。しかも私たちは小食なので、もったいなくて3人で2人前を頂きました。

一般の魚は、魚の死後4~5時間以内で食べるのが美味しいとされていますが、

フグの場合は、肉に弾力があるため、死後1~2日経ってからの方が実がやわらかくなり、熟成されるそうです。

だから、予約が必要なんですね。納得です。


 

てっさ(トラフグのお刺身)と焼きものです。

口に入れる時、お箸を持つ手が震えてきました。

大丈夫でしょうか?

ちょっと怖かったので、心の中で

南無阿弥陀仏と唱えて口に入れました。



フグは肉質が繊維質のため、普通のお刺身のように

厚く切ると、噛み切れません。

だから透けるくらい薄く切るそうです。

噛み応えがあるというのはよくわかります。

以前、スーパーで処理済みのフグが売られて

いたので買ってきて煮つけにしてみたら、

普通の白身魚のように軟らかくなかったです。

噛み応えがあって美味しいものでした。

フグは煮魚にしても美味しい。


ポン酢ともみじおろしとねぎが

薬味で添えられていました。

このもみじおろしが辛くて美味しかったです。

あんなに美しいもみじおろしを見たことがありません。

真っ赤に染まった大根おろしでした。


てっさは普通の魚のお刺身に比べたら、

特別美味しいとはいえないと思いました。

味がないというか……

でも北大路魯山人は味がないからこそ、

最高と言っていますが何のことやら(笑)

でも何か魅力があるんですよね~。


わかります。


でもお隣に盛りつけてあったフグ串焼きは

美味しいと思いました。




 てっさは上の写真のように

丸いお皿にぐるっと盛られているイメージでしたが、

こちらでは四角いお皿に斜めに盛られていました。

丸いお皿の場合、お皿の外側からお皿の中心に

向かって円を描きながら盛りつけられているので、

食べる時にはお皿の中心から外側に向かって円を

描くように食べていくのが食べやすいそうです。


1人前ずつですから仕方がありませんが、

ちょっと残念でした。

わがままを言えば、小さな丸いお皿に

放射線状に並べてほしかったかな。

この場合、お皿は青色が映えると思います。

一番美しくないのは、白いお皿ではないでしょうか。

 

フグの皮と大根人参の酢の物です。

コリコリした食感でした。

さっと皮を湯がいて氷水で締めたものです。

コラーゲンでゼリーのようになっています。

 

白子豆腐です。

白子とはフグの精巣のことです。

あまり美味しいものではありませんでした。

 

寄せ鍋の材料です。

フグの骨つき身・白菜・ねぎ・しめじ・

つみれ団子・すだれ麩・中島菜・春雨など。


ポン酢で食べるいわゆる

”てっちり”(チリ鍋)ではありませんでしたが

だしに美味しい味がついていましたから

寄せ鍋もいいと思います。

 

加賀すだれ麩入りフグの寄せ鍋です。

フグの毒は300度の熱にも耐える猛毒なので

もし毒があっても消えませんのであしからず。


この鍋で大きなアジのつみれ団子を食べましたが

美味しくてとても感動しました。

素晴らしいです。


 

カリっと揚がったフグの唐揚げです。

骨ごとぶつ切りにしたフグです。

辛いもの好きなので、コショウをもらいました。

 

茶碗蒸しの中にはフグは入っていません。

能登の海藻が入っていました。

 

フグの炊き込みご飯です。

炊き込みご飯をこんな塗り椀に盛るのは

素敵だなと思いました。

家でも真似してみたいと思います。

 

フグではなく、大きなアサリのおすましです。
 
 

フグの青朴葉味噌包み蒸しです。

 

甘辛いお味噌がよく合います。

一味唐辛子をふって。


 
 

デザートは3種類。

パイナップル・チーズケーキ

そして、ごまおはぎでした。

ごまおはぎが大好きでした。

 

3人で2人前を頂くので、もしかしたら

お腹がいっぱいにならないかもしれないと

思いましたが、腹八分目でちょうどよくて

単品を別注文する必要がありませんでした。

サザエのつぼ焼きは安いと思いました。

 
 

館内の日帰り湯も入れますが私たちは

お風呂に入りませんでした。

海のそばなので、塩入りで温まりそうですが、

もしお風呂で中毒症状が出てきたら……と

心配で入りませんでした(笑)。

 

すぐそばに猿田彦温泉もありました。

猿田彦は天狗みたいな日本神話の神様です。

フグを食べに行った帰りの運転は気をつけなくてはなりません。

フグを食べてな~んともなくて、フグを食べた帰り道で、命を落としたら、

「フグを食べに行った帰りに交通事故で命を落とした親子3人」とお葬式で笑われたりして恥ずかしいです。

変なことを想像してしまう年寄りです。

 
 
 

「そのまま食べると確実にあの世行き」の

”ふぐの卵巣”を使った

加工品の卵巣の糠(ぬか)漬けです。

金沢ではふぐのこんか(米糠の意味)漬けと言います。

石川県の美川と金石という町だけの郷土料理です。


金石の油与商店のふぐのこは石川県内なら

パーキングエリアや道の駅だけでなく、

近くのスーパーマーケットでも手軽に買えます。

1個500円くらいです。



金石の油与商店のホームページはこちらから


https://www.aburayo.jp/油与商店

 

マウスによってテトロドトキシンの含有量を調べて

大丈夫ならこのシールが貼られて出荷されます。

基準値は1g当たり、10マウスユニット以下です。

つまり100%は毒が抜けてないということ…。


この石川県ふぐ加工協会のシールは大変重要です。

もしこのシールを貼ってないフグの子が

安く売っていても

死にたくなかったら買ってはいけません。


10年以上前ですが、輪島の朝市で

無免許の人の作ったフグの卵巣の糠漬けを

買った人が食中毒を起こしました。

この時の漬け込み期間は1年半だったそうで

やはり2年以上というのは重要な意味が

あるということです。


そしてたくさんのマウス(ねずみ)の犠牲の上に

私たちは安全に食べることができます。

 

ふぐの卵巣には、肝臓と同じく猛毒のテトロドトキシンが

多く含まれているため、そのままでは食べられません。

ところが、石川県の美川地区と金石地区では、昔からゴマフグの卵巣を2年以上塩漬けした後、

糠漬けにすることで毒素を消し、珍味として販売しています。

食品衛生法によって食用が基本的に禁止されている卵巣を、この加工法によって

食品として製造・販売が許可されているのは、日本全国でも石川県だけです。

 
ゴマフグ  
 

詳しい作り方を調べてみると

①5月から6月にかけて日本海沿岸で獲れたゴマフグの卵巣をタンクに入れて

 卵巣の30%の塩を加えて 1年~1年半くらい漬け込む。

 (大量の塩によって、卵巣内部の水分が外に出て、卵巣が硬くなる)


②水洗いして、表面の塩を取り除いた後、米ぬか・米こうじ・魚汁(いしる)と共に

 一升樽に重石をして1年間漬けこむ。


③粕(かす)漬けの場合は、ぬか漬けの後、酒粕に1か月漬け込む



それにしても、この伝統的な製法、何人の犠牲の上で確立したものでしょうか……南無阿弥陀仏

 

匂いをかぐと、複雑な匂いがします。

はっきり言って私はこの匂い…だめです。

夫(お酒好きです)は大丈夫だそうです。

相当クセが強い珍味です。

そして食べてみると、相当塩辛~いです。

明太子(タラの卵巣)などと違い、塩漬け期間が

かなり長いので、塩気が強いのです。

炊き立てご飯にのせて食べたり、

酒(特に日本酒)の肴として食べます。


私の長女のご両親(いける口)が大好きな珍味です。

でもお酒を飲まない私にとっては、正直言って

「君は食べるのか…そんなにしてまで……」

の食べ物です。




このフグの子、チャーハンやスパゲティーに使ったり

してもいいらしいですが、アイスクリームにふりかける

という気持ち悪いレシピもネットで見ました。

 

材料の中に魚汁と書いてあるのは能登特産の

魚類から作る調味料の”いしる”です。

独特の旨味があります。


これだけの塩分ですから当然保存料は必要ないです。

冷蔵庫のない昔昔から作られてきました。




英会話仲間で金石の人がいるんですが、

その人に金石の油与商店のふぐの子のことを

聞いてみたら、意外なことを知りました。

金石では昔から普通の魚屋さんでフグを買える

そうで魚屋さんが免許を持っているかどうかは

知らないそうですが、てっさ(フグの刺身)も

普通に食べてきたそうです。

私達、わざわざ能登まで食べにいった

意味ってあったんだろうか……と思いました。

フグの食文化、石川県にはないとおもっていたら

ちゃんとあるじゃないですか!!!



スーパーにはこんな風に

スライスされたものも売っています。


うすく切らなくてもいいのでお手軽です。

1パック298円でした。


珍味のフグの卵巣の糠づけに比べて、

もっと一般的なフグの加工品が”フグのすじ”です。

3枚に卸して干したフグを糠や酒粕に

漬け込んだものです。

こちらは卵巣と違い、子どもの頃から家でよく

食べてきたお馴染みの味でとても美味しいものです。

肝臓や卵巣ではないので毒がないと

思われていますが、実は時々あります。

あるといっても大したことはありません。

私の母はこれを食べてちょっぴりだけ

舌がしびれたことがありました。

ふぐのすじを食べるたびに

そのことを自慢していました(笑)。

 
 
 
ところでフグにはどうして毒があるのか……が不思議でした。

気になるので調べてみました。



実はフグは普通の魚のように尾ひれを使って体をくねらせるようにスイスイと泳ぐことができません。

小さな尾びれと尻びれを使ってパタパタと不器用に泳ぎます。

ユーチューブで映像がありました。→https://www.youtube.com/watch?v=NeRJJmoHAis 

つまり、泳ぐのがへただから、敵が来たら素早く逃げられないのです。

そのため、緊急時にはプーっと膨らんだり、毒を出して敵を威嚇して身を守っています。

防御機能だったんですね。知りませんでした。


さて……フグを食べてから一日以上経過しました。

どうも中毒を起こさなかったようです。

”てっぽう”に当たりませんでした。よかったよかった。
 
 
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